個人許可と法人許可

簡単に言うと、個人事業主の方が取られる建設業許可のことを「個人許可」といい、法人(多くの場合は会社)が取られる建設業許可のことを「法人許可」と呼んでいます。個人許可と法人許可では、取得の要件等の面で大きな違いはありません。一般建設業の許可の場合、財産的基礎として500万円以上の自己資本または資金調達能力が必要ですが、個人許可・法人許可ともに金額も同じです。ただし、提出する書類に少し違いがあります。たとえば、法人(会社)の場合は登記簿謄本や定款の提出が必要ですが、個人事業主の場合はこれらがないので提出する必要はありません。

どちらが有利とかあるの?

個人許可と法人許可どちらが有利というのはあるのかというのは、ときどきいただく質問です。一概にどちらがというのもないのですが、個人許可の方が不便であるというのはたしかにあります。また、金融機関からの融資を検討されている場合には、法人の方が受けやすいというのはあるといえるでしょう。以下、個人許可の場合に考えておかなければならない点について挙げておきます。

個人許可はあくまでその人についてだけ有効です。
たとえばAさんが個人許可を取ったとします。この個人許可はAさんについてだけ有効なので、誰かに引き継ぐことはできません。これが大きく問題になるのが、事業承継の場面です(事業承継についてはこちらで詳しく解説しています)。
Aさんが引退する場合は、新たに許可を新規で取り直さなければなりません。また、後に法人で許可を取る場合も法人許可を新規で取らなければなりません。原則、許可番号を引き継ぐこともできず、新しい番号が与えられます。
事業用の機械や不動産を引き継ぐのに手間がかかります。
これは何も建設業だけに限ったことではなく、個人で事業をされている場合に常に考えておかないといけないことではあります。
個人許可の場合、事業で使っていた機械や不動産はすべて個人の名義になります。これも事業承継の場面で問題になることが多いのですが、相続人が後継者だけであればさほど問題はありません。しかし、後継者以外に兄弟がいる場合は事業用の機械や不動産であっても相続財産となるため、必ずしも後継者が従前どおりそれらを事業に使用することができるとは限りません。
この点、法人許可の場合はすべて会社名義となりますので、たとえ代表者が亡くなっても従前どおり機械や不動産を使用し続けることが可能です。
法人許可の方が一般に信用度が高いです。
これも建設業だけに限ったことではありませんが、個人事業主と会社とでは対外的な信用度という面では会社の方がやはり勝ります。特に規模の大きな建設業者の場合は個人許可を受けている業者よりも、法人許可を受けている建設業者の方を優先します。また、金融機関から借り入れを行う場合も、個人事業主よりも会社の方が融資が下りやすいと一般には言えるでしょう。